「・・・・・・失礼ですが・・・。みなさん、どちら様ですか?」
全員 「・・・・・・・・・。」
鳳 「・・・じょ、冗談はよして下さいよ。」
「私、みなさんと同じ学校なんですか・・・?」
向日 「部活だって、一緒だろ?!」
「・・・はぁ。」
・・・なんと、は記憶喪失になっとった。
医者 「生活に不便することは無いと思います。どうやら、自分の名前や人の名前などだけを、忘れているようです。被害を受ける前に何か、忘れたいことがあったのではないか、と思われます。早く、思い出させようとせず、ゆっくり見守ってあげることが、1番の薬ですよ。」
そう、先生は言った。
そして、は念の為、もう少し詳しく検査するゆうことで、面会謝絶となってしもた。
跡部 「・・・くそ・・・・・・。」
まだ、跡部は自分を責めてるみたいやった。
跡部 「アイツ・・・、何を忘れたかったんだ・・・・・・?」
そう、跡部が呟いたのを、みんなは聞こえんフリをした。
数日後。無事、は退院し、普通に生活を送っとった。ただ、の性格は、随分、変わったけど。
「忍足く・・・ん、じゃなくて、忍足。」
忍足 「いや、別に無理して呼ばんでえぇで?」
「ありがとう。・・・でも、今まで「君」を付けてなかったのに、急に付けるようになったら、変でしょ?それで、みんなが部活に集中できなくなったら、嫌だし。」
忍足 「俺らの為に・・・?」
そう、俺が聞くと、は慌てて否定した。
「もちろん、自分の為でもあるよ!だって、そうしていると、早く記憶が戻りそうでしょ?」
たぶん、俺らに気を遣ってる、っていうことが、余計、俺らに負担がかかる、と思て、そう言ったんやと思う。・・・前のやったら、こういう時、きっと、こんな感じに・・・
「違うわよ。私は、自分のことを考えたの。だって、男子テニス部が練習に集中出来ず、上の大会に出れなかったら、私の男子テニス部マネージャーという地位が無くなるのよ?そんなことになったら、周りの女子に自慢話することが無くなっちゃうじゃない。」
とか、強がった発言をするんやろうけど、今のは大人しくて、そんな強がった発言はせぇへん。それに、跡部との会話も・・・。
「跡部く・・・、跡部!」
跡部 「・・・なんだよ。」
「べ、別に、何も・・・。・・・ゴメン。」
って感じに、ちっとも話が続かへんし・・・。まぁ、跡部も素直や無いのが悪いんやけど。
とにかく、は俺らに迷惑かけへんように、早く記憶を戻そう、と必死やった。先生が言うたはったように、そんな焦ったら、余計に戻りにくいのに。それでも、は頑張っとった。だから、俺らは協力した。
芥川 「あのね、。病院の先生が、あの日、被害を受ける前に、何か忘れたいことがあったかも、って言ってたんだけど、それ、思い出せない?」
忍足 「いや、それが思い出せてたら、簡単やん・・・。」
「・・・いえ、全く。」
向日 「それじゃ、あの日を再現してみるのは、どうだ?」
鳳 「それは、いいかもしれませんね。」
宍戸 「向日にしては、やるじゃねぇか。」
向日 「どういう意味だよ!・・・くそくそ宍戸め!」
樺地 「とにかく、やってみましょう。」
と、いう訳で、俺らは、あの日と全く、同じ場所に着き、そして、同じような台詞を言うことにした。
「――そっか・・・。それより、記憶を戻すために付き合わして、本当に、ごめん・・・。」
忍足 「えぇから、えぇから。・・・それより、は、あの日、不機嫌そうに部活へ来たんや。もっと、怒った顔しときや。」
「うん、ありがとう。」
そうして、再現はスタートした。
忍足 「よぅ。どうしたん?」
「あっ、忍足。・・・別に、何にも無いけど。」
跡部 「よぅ。。」
そう言った跡部は、あの日みたいな挑発的な言い方とちゃうかった。
「・・・・・・。」
跡部 「無視かよ。・・・お前も、素直になれよ。」
そう言った時も、どこか、投げやりな感じだった。
「・・・うるさい!素直になってないのは、どっちよ!・・・・・・私、買い出し行ってくる。」
・・・は、少し、跡部が気になってたようやけど、そのまま続けた。
「あっ。宍戸、岳人、ジロー。何か買ってきて欲しいもの、ある?」
宍戸 「じゃあ、俺テーピング。」
「了解。」
向日 「俺は、特に・・・。」
芥川 「俺、アイス〜!」
「却下。現在は部活中であります。」
芥川 「え〜!」
「じゃあ、テーピング・・・・・・とジュース買ってくる。」
芥川 「やった〜!ありがと〜!」
で、はあの日のように買い出しへ行く、フリをした。俺らは、その後をついていった。
「(何を忘れたかったんだろう・・・。それから、跡部君の言動が毎回、胸に刺さるように痛いのは、何か、関係あるのかな・・・。・・・・・・跡部?)」
しばらくすると、の足が止まった。そして、ものすごい勢いで、こっちに走ってきた。
「・・・ハァ、ハァ。・・・・・・思い出した!」
芥川 「本当?!」
「うん・・・!」
そんな簡単に戻るもんなんやろうか、そう疑ったのは、俺以外にもおった。
鳳 「本当に戻ったんですか?俺達に心配かけないように、って演技してるんじゃないんですか?」
「あのね・・・。ふ〜・・・。演技だったら・・・、こんな必死に走って戻らないわよ。走るのが嫌いで、体力の無い、私が。」
そう言ったは、ホンマにしんどそうやった。
向日 「じゃ、俺のおかげだな!」
「岳人のおかげ・・・?なんで?」
向日 「だって、俺があの日を再現しよう、って言い出したんだぜ?」
「そうだっけ?・・・いや、記憶喪失になってた時の記憶が無くなったのかもね〜。」
向日 「くそくそ!ワザとだな!」
宍戸 「いつものに戻ったみたいだな。」
「うん、みんな。ありがとう!・・・岳人も、ありがとっ!」
ホンマに記憶が戻ったみたいやった。
「忍足!意味わかったよ!」
忍足 「――そうか。それは、安心した。」
そう言うて、は跡部の所に行った。みんなも気、利かして先に学校に戻った。・・・そやけど俺は、ある言葉が聞こえてしまって、止まった。
「あのね・・・。私があの日、忘れたかったのは・・・、アンタ。跡部のことが忘れたかったのよ。」
俺は心配になって、戻ってきてしもた。
跡部 「・・・・・・・・・・・・。」
「あの日、跡部は私に『素直になれよ』って言った。確かに、私も意地を張ってたとこ、あるかもしんない。・・・だけど、跡部は?跡部だって、私のこと好きだ、みたいに振舞ってるけど、本当はどうなのよ?私のこと好きじゃないんだったら、そんな風にからかわないで!私は・・・、私は本気で好きなのに!」
跡部の奴・・・、素直とちゃうからなぁ、と俺は心配したけど、どうやら、要らぬ心配やったようや。
跡部 「だから、あの時、お前『も』って言っただろう。本当は、俺だって本気で・・・・・・。」
「何・・・?本気・・・・・・?・・・・・・クッ・・・。」
跡部 「・・・・・・どうした?」
「あ〜、もう駄目!ハハハ、堪えられない!」
跡部 「あぁ?!」
「だって・・・!跡部!すっごい顔・・・・・・!そんな弱気な顔、見たこと無いから・・・。・・・・・・クックックッ・・・。」
跡部 「てめぇ・・・!!」
俺は今度こそ、学校に戻った。だから、その後は知らんねんけど、まぁ、仲良うやっとるみたいやし、安心や。
「安心して、最初に言ったことは嘘じゃないから。」
跡部 「何が安心して、だ?!」
「そう、怒らないでよ。だって、あの日、聞いたんだもん・・・。また、跡部、告白されたんでしょ?で、その子言ってたよ。『跡部君、数秒悩んだから、きっと私のこと、好きなんだ!』って。」
跡部 「・・・あの女、そんなこと言ってやがったのか。」
「それで、『きっと、フッたのには、何か理由があるんだわ。』って。・・・その日は、ちょっと、そうなのかな、って思っちゃったんだけど、今はそんなこと無いや、って思ってる。」
跡部 「当然だろ。」
「だって、跡部。・・・私のこと好きだもんね〜?」
跡部 「・・・・・・知るか。」
「こらこら、跡部君。素直にならないと、また私、記憶喪失になっちゃうかもよ?」
跡部 「なっとけ。」
「何だよ、くそくそ!跡部め!・・・ハハハ、岳人風。似てた?」
跡部 「アホさ加減が、な。」
「あぁ!なんだと?!・・・って、岳人に失礼だ。クスクス。」
まぁ、前と変わらず、よう喧嘩もしよるけど、喧嘩する程、仲がえぇっちゅうことやろう。
そやけど、ホンマ戻って良かったわ。記憶を戻すために再現しよう、ってなった時、があんなこと言い出しよったし・・・。
「ねぇ、忍足君。・・・あっ、忍足。」
忍足 「だから、えぇで?」
「うん、あのね・・・。私って、記憶喪失になる前、誰が好きだったか、知ってる?」
忍足 「・・・・・・・・・。さぁ・・・。から聞いたことは無いわ。」
「そう・・・。」
忍足 「なんでや?それ聞いたら、思い出せそうなんか?」
「そうじゃないんだけど・・・。ただ、私、忍足君のこと・・・好きだったんじゃないかな、って思ったから。忍足君、優しいし・・・。私のこと、1番心配してくれてそうだし・・・。」
忍足 「俺のことが好きっていうのは、ありえへんで。・・・たぶん、俺は跡部やと思うわ。」
「跡部君・・・?!」
忍足 「そう。・・・それに、を1番心配してんのも、俺とちゃうで?」
「だれ・・・?」
忍足 「跡部や。アイツ、あんな風に素気なくしとるけど、ホンマはめっちゃ、心配しとんねん。それに・・・。」
「それに・・・?」
忍足 「それに、が意識不明になっとった時、ずっと手、握り締めて『』って呼びかけとったし。それから、が目、覚ました時、抱きしめたんもアイツやろ?跡部とは、両想いやと、俺は思うんやけどなー。」
「今は、想像もつかない。・・・でも、記憶が戻ったら、わかるかな?」
忍足 「絶対、わかるって。そうや!もし、俺の言う意味がわかったら、俺に報告してくれると、嬉しいんやけど?」
「うん、わかった。報告するよ。・・・・・・そうか。あの声、跡部君だったのか・・・。」
忍足 「・・・聞こえてたん?」
「うん、まぁね。そっか・・・。それより――。」
そういえば、あの時、なんか言いかけとったけど・・・、なんやったんやろうか。
「・・・あの時?あぁ、あれね。・・・・・・あの声、すごく優しくて、手も暖かった。それで、すごく安心した。・・・って言おうとしてたの。その後、もしかして跡部君のこと・・・、って思ったんだよねー。それで、ジローが『病院の先生が、あの日、被害を受ける前に、何か忘れたいことがあったかも、って言ってた』って言ってたから、跡部君が原因かな、って考えて・・・、それで記憶が戻ったってとこかな。だから、忍足とジローに感謝!」
、途中はふざけたみたいに言うてたけど、「あの声、すごく優しくてー」って言うてるら辺が、ものすご真剣やったし、ホンマに跡部が好きなんやな、って改めて思ったわ。
「くそー?このナルシストが!」
跡部 「ハッ。俺はナルシストじゃなくて、本当に凄いんだよ。」
「それが、ナルシストだって、言ってんだよ!」
跡部 「あ〜ん?」
ホンマに跡部が好きなんやろう・・・、たぶん・・・・・・。
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なぜか、忍足視点の跡部夢が終わりました〜!(笑)いや、本当。
「なんで、忍足視点なんだよ?」って話ですよね?まぁ、答えは関西人の管理人が書きやすいからです。
なので、その他の話にも、よく出てくると思いますが、よろしくお願いいたします(笑)。
あと、この話の元ネタは、実は存在します。元ネタっていうか、ちょっと資料的に・・・。
『名探偵コナン』の映画の『瞳に中の暗殺者』だったかな?それで、蘭ちゃんが記憶喪失になるんですが。
その記憶喪失になってしまったきっかけなんかを、少し参考にさせていただきました。